ヘッドハンターの成功要因
20代からヘッドハンターとして活躍する人は少ない。多くは十分なビジネス経験を積んだ上で、業界内の人脈を財産にヘッドハンティングを始めるケースが多いからだ。なぜ備海氏は独立できるほど、ヘッドハンターとしての地位を確立できたのだろうか? その3つの要因を分析した。
備海氏は「ヘッドハンティングの仕事は、『点』と『点』を繋げ『線』を作ること」だと述べている。そのためには、人材・クライアント両面に多くの"布石"を打っておかねばならない。備海氏はヘッドハンティング目的以外にも日ごろから多くのネットワークを構築しており、そうした下地がビジネスに繋がっているのだろう。
月間30~40冊を超える購読雑誌から、さまざまな業界の情報を蓄積している。それだけではなく、本人も東証1部企業・ベンチャー企業・新会社設立など多様なビジネス経験を積んでいる。こうして頭に蓄積されたデータベースが、ヘッドハンターに欠かせないカンである「この人はこの会社にピッタリ」という"ひらめき"を生むのだろう。クライアントの人材ニーズを具体化するため開催されるミーティングでは、クライアントに多くの具体例を投げかけ候補者のイメージを明確にするのに、このデータベースが役立っているという。
多くの人材を知っていることが、ヘッドハンティングの第1歩。しかし、知っているだけではビジネスに結びつかない。備海氏がターゲットとするビジネスパーソンは高い年収を稼ぐハイスペック層。「年収が高い人ほど時給が高い」と備海氏がいう通り、彼らは時間に極めてシビアである。 よってヘッドハンターが最初に割いてもらえるのはたった30分。この短時間で相手をつかみ、濃密な時間を作ることがヘッドハンターとしての腕のみせどころ。相手がほしがる情報を瞬時に見抜き、期待以上の情報を提供する。さらに日ごろから話題を豊富にし、相手が好むテーマを掘り下げることで、相手の信頼を獲得するのだという。 こうしてしっかりと"つかんだ"候補者たちと、常に適度な"間合い"を取りながらイザというとき役立つ人脈にしているのだ。これは一般のビジネスパーソンも見習いたい人脈術である。
(インタビュー 2005年3月30日 取材・文/角田 正隆)